中国近世語学会2011年度秋季研究集会のご案内

「暑い、暑い」と言いつつ過ごした酷暑が過ぎ去り、11月に入れば流石に肌寒さを覚えるような気候となりましたが、会員皆さまにはご健勝のことと存じます。
本年の秋季研究集会を下記の要領で開催いたしたいと思いますので、会員の皆さまの積極的なご参加をお願いいたします。
今回の秋季研究集会は個人の研究発表以外に、ワークショップ「官話の虚像と実像」が予定されていますが、本ワークショップは竹越孝会員が発案され、発表者の交渉からすべて竹越会員がご尽力された結果であります。この場をお借りし、竹越会員には衷心より感謝の意を述べたいと思います。
個人研究及びワークショップが実りある成果が得られますよう、会員の皆さまからの積極的な発言をお願いいたします。

中国近世語学会会長
佐藤晴彦
2011年11月11日
中国近世語研究集会

日時:12月10日(土) 午前10時30分より
場所:大東文化大学 信濃町キャンパス(信濃町駅ビル3階)JR中央線・総武線「信濃町駅」下車0分


プログラム
午前の部 10:30〜12:00
研究発表
1)発表者: 田村 新(首都大学東京・非常勤講師) (10:30~11:15)
題目: 「黎錦煕の『納氏英文法』受容に関する一考察」
要旨:
文法学説史の先行研究では、1930年代半ばまでの研究の特徴として、西洋の言語学理論を受容した点を上げている。本発表で取りあげる黎錦熙『新著国語文法』(初版1924年)もJ. C. Nesfield著English Grammar Series (初版1889)の影響を受けたとされる。龔千炎1997『中国語法学史』によれば、二者の品詞の分類法(p.65)、代名詞などの下位分類の類似(p.67)という事実を指摘している。しかし、発表者は「1920年代前半における中国語白話文法研究について」(『人文学報』418,pp.1-18所収)で、民国初期から品詞の分類法はほぼ一貫している事実を上げており、龔氏の示した証拠は、Nesfieldの理論を受容した証拠となるか疑問がある。
本発表ではこの疑問に対して、改めて黎錦熙とNesfieldの二者を比較対照し、黎錦熙が実際に何を受容したのか、またそれは「受容」といえるものなのかを考察し、報告したい。

2)発表者: 山田 忠司(文教大学) (11:15~12:00)
題目: 「民国初期新聞連載小説からみる白話の諸相 ―『京話日報』掲載小説を材料に―」
要旨:
現代共通語(口頭語)の基礎になる北京語はほぼ清代に成立したとされる。それを反映した言語資料としては『紅楼夢』(1780年頃)、『児女英雄伝』(1878年)が著名であり、それが老舎諸作品へと繋がるのであるが、清末民初の資料は極めて乏しいのが実情である。
本発表ではその空白を埋めるべく、当時北京で発行されていた新聞『京話日報』紙上の連載小説の言語について報告する。
今回調査したのは『京話日報』に民国7年(1916)3月20日から同年5月6日まで48回にわたって連載された小説『阜大奶奶』(約5万字)の言語である。作者は剣胆という人物で、彼は当時かなり売れっ子の作家であったようである。
調査の結果、太田1969提示の北京語指標をほぼ満たし、また北京俗語とされる語彙も多く使われているのが確認できた。一方、南方的語彙、語法は見いだせず、北京語としての特質を十分有したものと言える。

お昼休み

午後の部(13:30〜16:30)
ワークショップ「官話の虚像と実像」
金文京『漢文と東アジア―訓読の文化圏』(岩波新書,2010)は、とかく固定したイメージで語られがちな「漢文」を、より広い枠組のなかで捉え直した画期的な著作でした。中国近世語の世界で、これに似た特徴を持つ概念として「白話」及び「官話」というものがあります。しかし、これらは「漢文」と異なり、ありうべき規範が可視化されていないように思われます。今回のワークショップでは、3人の発表者が中国周辺の地域において「白話」そして「官話」がそれぞれどのような実像もしくは虚像を与えられ、その本質とは何だったのか、という点をめぐって話題提供をする予定です。自由討論の時間を多くとりますので、同様の問題意識を持つ方や関連領域に関心のある方の参加を歓迎します。

1.唐話・琉球資料…木津祐子(京都大学)
2.西洋資料…塩山正純(愛知大学)
3.朝鮮資料…竹越孝(神戸市外国語大学)
司会…奥村佳代子(関西大学)

*ハガキにて、12月5日頃までに、出欠をお知らせください。
*発表者の方へ・・・レジュメは各自でご用意のほどよろしくお願いいたします。
*年会費(3000円)をまだお納めでない方は、どうぞお納めください。
郵便振替 口座番号:00980-6-119965 口座名称:中国近世語学会

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