中国近世語学会2023年度研究総会のご案内

ごあいさつ

 4月より内田慶市先生の後を受け、本学会会長を務めてさせていただきます山田忠司と申します。元よりこのような大任に当たる有能な者ではありませんが、なった以上は私自身も多くのこと学ばせていただいたこの歴史ある学会の発展に恩返しとして微力を尽くしたいと考えております。
 さて、本学会の最初の学会機関誌は1962年7月発行の『清末文学言語研究会会報』です。これには香坂順一、太田辰夫、宮田一郎、橋本萬太郎先生など錚錚たる先生がたの論考が掲載されております(機関誌名は『明清文学言語研究会会報』を経て16号(1977年)より現在の『中国語研究』に変更)。爾来60年以上にわたって諸先生方のご努力により学会活動を発展させて参りました。しかしながら、昨今の学会を取り巻く情勢は色々な面で厳しいものであると言わざるを得ません。このような環境下にあって、本学会の発展のために何をなし得るのかを考え、できることは実行していきたいと思いますので、会員各位のご提言、御協力を切にお願いいたします。

中国近世語学会会長 山田忠司
2023年4月11日

日時:2023年6月4日(日)10:00開始
場所:関西大学千里山キャンパス以文館4階セミナースペース+Zoomミーティング
◎千里山キャンパス 吹田市山手町3-3-35
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/about/campus/
・電車でのアクセス
阪急電鉄千里線「関大前」駅下車、すぐ(正門までは徒歩約5分)。
・新幹線「新大阪」駅からのアクセス
JR「新大阪」駅から地下鉄Osaka Metro御堂筋線「なかもず」行で「西中島南方」駅下車、阪急電鉄に乗り換え「南方」駅から「淡路」駅を経て「関大前」駅下車(この間約30分)。
・大阪(伊丹)空港からのアクセス
大阪モノレール「大阪空港」駅から「門真市」行で「山田」駅下車、阪急電鉄に乗り換え「関大前」駅下車(この間約30分)。

◎Zoomミーティング/ミーティングIDについては事務局にお問い合わせください

プログラム
午前の部 10:〜12:00
10:00〜11:00
岩本 真理(大阪公立大学)
『崎港聞見録』再考

11:00〜12:00
萩原 亮(神戸市外国語大学)
イサーイヤ著『簡明中国語文法』第3版と『露中辞典』増訂版序の関係について

12:00〜13:00 休憩
午後の部 13:00〜17:00

13:00〜14:00
竹越 孝(神户市外国语大学)
满语、官话与土汉话——清代满洲旗人的语言使用

14:00〜15:00
千葉 謙悟(中央大学)
创造跨方言书写系统的尝试:高第丕的“新字”初探

15:00〜16:00 招待講演
Mårten Söderblom Saarela (Academia Sinica)
Joseph Rutten (1874–1950) and the promulgation of the Romanisation Interdialectique transcription system for Chinese(ご講演は中国語で行われます)

16:00〜16:10 休憩

16:10〜17:00 総会
審議事項・報告事項
1.役員について
2.会計報告
3.2023年度研究集会について
4.その他

閉会


研究発表要旨
1)岩本 真理(大阪公立大学)『崎港聞見録』再考
 『崎港聞見録』は内閣文庫に収められた資料で、「浅草文庫」の印記があり徳川幕府伝来本であることが知られる。その内容から三つの部分から構成されると考える。第一部は唐船の到着から唐船の補修などを含む、貿易実務に関わる単語を収録し、ほぼ字音表記を備える。第二部は日本語による叙述で、清朝の王族、官職、鉱物資源の所在、訴訟・犯罪、年中行事や建造物の特徴などを解説し、看板、人気の戯曲名などの個別の単語を含む。字音の表記は、固有名詞に限る。第三部はオランダ語の単語の列挙で、アルファベットではなく、カナによる発音の表記と語釈で、貿易品の名称と思われる。この三つの部分は、同一人物に対する同一時点の聴取により得た情報とは限らないであろう。第一部に収載された「聖廟先生」には向井元仲(第5代長崎聖堂祭酒)の名をあげ、つづく「廟主」には青木主水をあげる。『長崎聖堂祭酒日記』(関西大学東西学術研究所資料集刊28)所収年表によると、向井元仲の在職は享保12(1727)年~明和2(1765)年である。青木主水については不明点が残る。『長崎先民伝』に載せる神道家、青木永弘は自ら主計頭と称し、諏訪社の宮司を務める家系である点は有力視できるが、永弘の歿年は享保9(1724)年である。少なくとも青木主水なる人物は諏訪社の宮司のであると推測できよう。一方、第二部にある「萬壽節」に「雍正帝ノ誕生日」との語釈を与え、質札の例として「雍正某年某月某日」と記述することから、雍正年間(1722~1735)における口述を文字化して残した資料であると思われる。

2)萩原 亮(神戸市外国語大学)イサーイヤ著『簡明中国語文法』第3版と『露中辞典』増訂版序の関係について
 本発表では、ロシア正教会北京伝道団の宣教師イサーイヤ(1833-1871)の手になるКраткая китайская грамматика (『簡明中国語文法』)の成立について、同じ著者によるРусско-Китайский Словарь разговорного языка (Пекинского наречия)(『露中辞典』)との関係性を中心に考察する。『簡明中国語文法』はロシア人の著者が観察した清末における北京語の文法書であり、管見の限り、1906年刊行の第3版のみが現存する。『露中辞典』は辞典という名ではあるが、実態は北京語の口語を記録した対訳語彙集に近く、1867年刊行の初版、1869-1870年刊行の増訂版が現存する。両書ともに北京語のストレスアクセントに関する記述を有する点が特徴である。
 両書に関しては、橋本萬太郎1958「ロシアの中国語研究」に説明があり、それによれば『露中辞典』増訂版には、初版にない「長文の序」が付されているとされる。本発表では、この増訂版「長文の序」と『簡明中国語文法』第3版のロシア語部分が基本的に一致することを確認し、合わせてその言語的特徴の分析も行うことで、両者がどのような関係にあるかを明らかにする。

3)竹越 孝(神户市外国语大学)满语、官话与土汉话——清代满洲旗人的语言使用
  清政权迁都于北京(1644年)以后,随着满洲人逐渐被汉化,其母语也就随之演变成为汉语。清朝的历代皇帝对此情况感到可叹,多次发敕令以鼓励满洲旗人积极地学习满语,因此雍正期(1723-1735)以后在北京陆续出版了各种满语教材。这些教材表明,当时满人子弟需将汉语作为中介语言而逐步学习满语的文字、发音、语法与会话。本文拟通过分析清代满汉合璧会话教材的记载内容而描写出清代满洲旗人的语言使用情况。

4)千葉 謙悟(中央大学)创造跨方言书写系统的尝试:高第丕的“新字”初探
  高第丕(Tarleton Perry Crawford,1821-1902)是美国来华传教士,出生于肯塔基州,1852年作为浸礼会传教士来到来华,1858年短暂返回;1860年返华后,他在山东省从事传教工作。
  高第丕在上海时(1855年左右)为了书写上海方言而创制了自己的“新字”,在一段时间内较为流行。但由于其“新字”所代表的音值渐渐被遗忘,今天无法破译,无人问津。
  本报告将首先介绍高第丕的“新字”的概况。“新字”是一种拼音文字,由代表声母的左半部分和代表韵母的右半部分而组成,也可以说是一种音节文字。本文又指出,每个版本的所载的“新字”字母不尽相同,就是说“新字”的书写系统有了变化。据推测,这是因为高第丕并不打算让他的书写系统仅限于代表吴语,而是要扩展到书写中国的各种方言。

5)Mårten Söderblom Saarela (Academia Sinica)Joseph Rutten (1874–1950) and the promulgation of the Romanisation Interdialectique transcription system for Chinese
 In the early 1930s, two Catholic missionaries in China—Ernest Jasmin and Henri Lamasse—published a new romanization scheme for Chinese. Called romanisation interdialectique (R.I.), the spelling system was intended to provide an “etymological orthography” for written Mandarin, much like the orthographies of French and English. By encoding Middle Chinese phonological distinctions in their system, Jasmin and Lamasse believed that R.I. could be read out loud in the pronunciation of any Chinese dialect. Their system, Jesuit in origin, won the support of Joseph Rutten (1874-1950), leader of the Belgian Congregation of the Immaculate Heart of Mary (C.I.C.M., or Scheutists). In the late 1930s and then again after the Second World War, Rutten promoted Jasmin’s and Lamasse’s system in various circles both inside and outside China. Rutten’s support lasted until his death in France in 1950. This talk will look at the history of R.I. through the collection of Rutten’s correspondence and notes currently held in Leuven in Belgium. These documents allow us a glimpse into the last years of missionary linguistics in China, a time when just about everybody seemed to want to change the Chinese language.

年会費納入のお願い
今年度(2022年度)会費(一般5,000円、院生・学部生3,000円)を、郵便振替にてお納めください。昨年度分までの未納のある方は、年度を明記のうえ、併せてお納めください。
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郵便振替 口座番号:00980-6-119965 口座名称:中国近世語学会