2022年度研究総会のご案内

ごあいさつ

 薫風の候、先生方には益々ご研鑽のことと存じます。
 さて、今年もまた近世語学会研究総会の時期がやって来ました。
 コロナ禍の完全終息は当分見込めない状況ですが、生活はほぼ「日常」に戻りつつあるように思います。学会活動もぼちぼち元の形に戻していく時期に入ったと考えており、今回は感染対策を充分に施すという条件の下、開催校とも協議の上、対面とオンラインの併用で行うことに致しました。
 会員の皆様には、愛知大学の会場にお越し頂いても、オンラインでもどちらも構いませんので、どうか、奮ってご参加頂きますようお願い致します。

中国近世語学会会長 内田慶市
2022年5月2日

日時:2022年5月28日(土)10:00開始
場所:愛知大学名古屋キャンパス+Zoomミーティング
◎名古屋キャンパス 名古屋市中村区平池町4-60-6
https://www.aichi-u.ac.jp/guide/access#b-407288
・鉄道利用の場合
「名古屋」駅より徒歩約10分
 あおなみ線「ささしまライブ」駅下車 歩行者デッキ直通
 近鉄「米野」駅下車徒歩約5分
・バス利用の場合
 ささしまウェルカムバス「ささしまライブ」下車
 名鉄バス「愛知大学前」下車
 名古屋市営バス「ささしまライブ」下車

◎Zoomミーティング/ミーティングIDについては事務局にお問い合わせください

プログラム
午前の部 10:〜12:00
10:00〜11:00
金征(雲南大学大学院生)
「浅析伊泽式汉语注音法的诞生与成长」

11:00〜12:00
石崎博志(関西大学)
「『北京官話全編』の談話分析 「辞去」の場面を中心に」

12:00〜13:00 休憩

午後の部 13:00〜17:
13:00〜14:00
岩本真理(大阪公立大学)
「内閣文庫蔵『崎港聞見録』をめぐって」

14:00〜15:00
千葉謙悟(中央大学)
「アンボー=ユアール『京話指南』の言語特徴と「北京官話」」

15:00〜16:00
内田慶市(関西大学東西学術研究所研究員)
「『燕京婦語』の原書の発見について」

16:00〜16:10 休憩

16:10〜17:00 総会
審議事項・報告事項
1.役員について
2.会計報告
3.2022年度研究集会について
4.その他

閉会

閉会


研究発表要旨
1)金征:浅析伊泽式汉语注音法的诞生与成长
  伊泽修二是日本著名教育家,被誉为明治时期日本现代教育的先驱。上泽八郎在其著《伊泽修二》中也曾评价到“伊泽修二是日本极具影响力的教育先驱,是明治时期日本教  育的推动者。”
  伊泽修二作为教育家的身份广为人知,但鲜有人知伊泽修二在语言研究方面也取得过巨大的成就。伊泽修二在晚年时曾致力于汉语语音研究,为日本的汉语教育做出了不可忽视的贡献。六角恒广评价伊泽修二是“具有科学精神的语言研究者,明治时期逆流而上的汉语教育者”。伊泽修二曾借用王照的《官话合声字母》、西方语言学家贝尔的视话法原理,编写了一系列助力汉语学习的发音字典和学习教材。其中,他所提倡的依托伊泽式汉语注音字母进行汉语语音表记的方法,不仅为汉语注音提供了新的方法,也为日本人学习汉语语音提供了新思路。从事汉语研究多年的埋桥德良曾评价伊泽修二为“与太宰春台、阪本天山齐名的中日文化交流先驱”。
  因此,本文整理了伊泽修二所著部分汉语发音词典以及汉语教科书,以考察伊泽修二从事汉语研究的基础方法——视话法与反切法为出发点,以其所纂的《日清字音鉴》(1895年)、《视话应用: 清国官话韵镜》以及《视话清国官话韵镜音字解说书》(1904年)、《同文新字典》(1908年)及《支那语正音发微》(1915年)为线索,分析伊泽式汉语注音字母的诞生、发展、应用及成果情况,总结归纳伊泽式汉语注音法的历史变迁过程。

2)石崎博志:『北京官話全編』の談話分析 「辞去」の場面を中心に
 中国語は尊敬語や謙譲語などの文法カテゴリーがないため、相手への配慮を示すには語彙的な手段を用いる、表現そのものを変える、配慮の表現を複数組み合わせるなどの手段がとられる。現代語の談話分析は、存命母語話者の言語行動を観察することでその妥当性を検証することができるが、言語戦略の歴史的研究は存命話者の不在と資料の制限から歴史を遡るほど不明な点が多くなる。そのなかで深澤暹(1876-1944)『北京官話全編』(以下『全』と略称)は豊富な語料をほこり、北京官話によるポライトネス・ストラテジーが垣間見られる希有な資料である。発表においては語用論を用いて『全』に反映された清末の官話を分析する。とりわけ辞去者と送り手による別れ際の言語行動を中心に考察し、当時の言語戦略の一端を明らかにする。
 考察の結果として、辞去者が辞去を伝える行動に対し、送り手は引き留める言語行動をとり、さらに辞去者は辞去の理由を具体的に述べ、次に会う約束を明示するというやりとりが典型的に展開されることを論じる。こうした辞去の言説は「断り」のストラテジーと類似した戦略と言える。また、日本語でしばしば展開される、送り手による「来訪への感謝」や辞去者による「対応への感謝」が『全』には観られないことから、日本語からの言語転移はかなり少ないことを論じる。

3)岩本真理:内閣文庫蔵『崎港聞見録』をめぐって
 『崎港聞見録』は浅草文庫の表記があり、幕府伝来本とみなしうる。その構成は、まず前半に、ゆるやかなまとまりをもった語群を収録し、おおむねカナによる字音表記を付し、語釈は小字2行による。ただし分類項目名は明示されない。後半は、見出し語と語釈との区分のない記述となり、解説を加えつつ当該語句の発音を付す。最終葉にはオランダ語語彙をカナ表記で載せる。注目すべき二点がある。一点めは「萬壽節 雍正帝ノ誕生日 十月晦日ナリ」との記述と、質札の例として「雍正某年」の記述がある点。二点めは、字音の一部に特徴があり、例えば「地リイ」とすることが、『南山考講記』『改正 唐韻三字話』にも通じる点である。ついでながら岡崎由美2020「江戸時代の元曲辞典『劇語審譯』について―中国戯曲受容の視点から」(神奈川大学『人文研究』203号)は、『崎港聞見録』の戯曲関連語と対比しており興味深い。本発表では字音と、収録語彙に関して初歩的な考察をおこなう。『譯官雑字簿』『譯家必備』『譯司長短話』との対比も試みたい。

4)千葉謙悟:アンボー=ユアール『京話指南』の言語特徴と「北京官話」
 本発表ではフランス人外交官アンボー=ユアール『京話指南』(1887-89)の言語について分析を加え、その性格について考察する。『京話指南』は序文によればその名に反し「北方のことばと中部のことばの双方の性質を帯び」(p.XVII)ているため、文法・語彙面では明らかに京話的なものと官話的なものが混在している。しかし音系については1種類しか記載がなく、2種類の文法・語彙は音声的にはいずれもそれに基づくことになる。『京話指南』の音系は尖団を区別し、かつ「純粋な北京訛り…は取り除くよう努め」(p.XVII)ているため、素直に解釈すればかなり官話的な音系で京話の表現を話したことになる。しかしここでEdkins A Grammar of the Chinese Colloquial Language(1857:264)が「江南出身の北京居住者は北京の声調と南京の声母・韻母を用いる」という旨を記述していることを考慮すると、『京話指南』こそはかかる言語が存在したことの証左と考えられるのである。『京話指南』の言語は明らかに京話と官話のハイブリッドとでもいうべきことばであり、これが京話や南京官話とは異なる「北京官話」であったのかもしれない。

5)内田慶市:『燕京婦語』の原書の発見について
 北京語資料として極めて貴重である『燕京婦語』は鱒澤彰夫氏の所蔵になる天下の孤本である(と私は色んなところで書いたり述べたりしてきた)が、最近、その「原書」とでも言うべき版本が見つかった。ただ、2018年暮れの北京での古書オークションに出品されたもので、それがどこに落ち着いたのかは定かではなく、その参考の書影のみがオークションサイトに掲載されているに過ぎない。しかしながら、そこにアップされている20数枚の写真から、本書の監定者、訳者、著者が明らかになったのである。鱒澤氏所有のものには作者等の情報は一切付されていないが、今回のものには、はっきりと「日本川島浪速鍳定、仝川島福子、仝成田芳子、燕京王恩榮著作」と記されているのである。また、本書の成立についても、これまで本文の会話の内容から鱒澤氏によって大体の年代が推測されていたが、今回のこれらの人物の経歴から成書年代もほぼ明らかにされたと考えている。本発表では、『燕京婦語』にまつわる日中近代交流史、日中近代教育史の視点からも注目すべき事柄についてのべてみたい。

年会費納入のお願い
今年度(2022年度)会費(一般5,000円、院生・学部生3,000円)を、郵便振替にてお納めください。昨年度分までの未納のある方は、年度を明記のうえ、併せてお納めください。
郵便局備付の振替用紙(青色)に必要事項を記入してください。

郵便振替 口座番号:00980-6-119965 口座名称:中国近世語学会