2023年度中国近世語学会研究集会報告

ご挨拶

 会員各位には如何お過ごしでしょうか。本学会も新執行部体制2年目となり、理事各位のご努力により学会活動を行ってきております。
 さて下記の要領で2024年度研究総会を神戸市外大を会場として開催いたしますので、どうぞ皆様奮ってご発表、ご参加ください。また本学会機関誌『中国語研究』へのご投稿もお願いいたします。
 現在大学入試の最盛期でありますが、中国関係の不人気状態は続いているようです。当然大学院進学者も減少し、学会活動の沈滞が懸念されるところであります。これには様々な問題が絡んでおりますが、私たちにできるとこととして、いわずもがなではありますが、研究成果を外部世界に発信することがあります。若い方にこの学問領域の奥深さ、面白さを知ってもらうという意義も大きいかと思います。共に頑張っていきましょう。

中国近世語学会会長 山田 忠司
2024年2月21日

日時・場所

日時:2023 年 11 月 25 日(土)13:00-16:00
場所:中央大学後楽園キャンパス+Zoomミーティング

研究発表報告

1)鄒 王番(関西大学PD 鄒 王番):《教务杂志》汉语学习专门文章中的汉语学习经验
  本报告主要探讨了《教务杂志》(The Chinese Recorder)办刊历史中的汉语学习专门文章。这些文章篇幅较长,所涉汉语学习经验丰富。本报告选取了尹世嘉(O. F. Wisner, 1858-1947)、富善(Chauncey Goodrich,1836-1925)以及潘慎文(Alvin Pierson Parker,1850-1924)的文章,三人都有在教学机构中任职的经历,尹士嘉和潘慎文还担任过学校的管理者。
  报告指出,尹士嘉提出的汉语学习目标主要包括“听、说”两部分,同时为汉语学习者提出了10条经验;富善阐明了汉语学习“不通过阅读”“通过讲话”的原则,对比了成人以及儿童语言学习的不同,其提出的教学方法已体现“直接法”的教学思路;潘慎文主要为汉语学习者提出了若干条学习建议,内容涉及发音训练、时间分配、官话方言等。
  报告同时指出:三者的主要相同点体现在对于口语、听力的关注,对汉语教师的重视以及强调坚持学习汉语等方面。不同点则体现在以下几个方面:首先是关于阅读的看法,尹世嘉和富善的观点存在分歧,尹氏对阅读提出了具体的要求,而富氏则主张不通过阅读学习汉语。富善对于动词的强调是其他二者所没有的。潘慎文对于“直接法”的推崇,对于官话、方言的重视,是其他二者没有的。

2)陳 暁(神戸大学):清代後期における北京内城と外城の北京語について
 本発表では、清代後期の北京語を記録・反映する文献を対象として、北京内城と外城の北京語について論じた。
 19世紀以降の西洋人が編んだ中国語教科書、明治時代の中国語教科書及び北京語の辞書や各種の先行研究などによると、清代後期における北京内城と外城の北京語には違いが存在する。本発表では、声調、子音・母音、語彙の各面から、その様相を論じてみた。
 1.声調。H. GilesのA Chinese English Dictionary(1892)には、北京内城・外城、そして旗人の言葉の違いについての記述がある。これに基づいて、他の西洋人が編んだ中国語教科書、明治時代の中国語教科書などを調査し、いくつかの特徴的な声調を取り上げて述べた。
 2.子音・母音。先に述べたH. Gilesの著作以外に、他の文献(明治時代の中国語教科書、地方志、北京の社会風俗を記録した書物、北京語辞書など)においても、北京内城・外城では同じ文字に対して、子音・母音の異読現象があることを記録している。それらの異読現象やその特徴を取り上げて述べた。
 3.語彙。発音と同様に、北京内城・外城の語彙もそれぞれ異なるものがある。それらの語彙についてまとめて論じた。
 以上の発表に対し、会場から「上声の調値113と213は具体的にはどのように発音しますか」や「19世紀の資料において、上声に対して213と述べているのはどんな文献ですか」や「/tθ/という発音は、具体的にはどんな言葉で使われていますか」や「内城と外城について、地域により分けたものか、それとも階級、性別などによる分けたものか」などの指摘や質問を受けた。本発表者はこれらの質問に対し「言語実験のデータによると、上声の調値113と213という違いが確かにあります」「上声に対して213と述べているのは確か『語言自邇集』です」「/tθ/という発音は、例えば東陵満族郷にある満洲族は「満族」に対しての発音は [man214 tθu35] になります」「内城と外城について、階級の違いも重要ですので、今後は、他の資料も調査し、さらに詳しく考察する必要があると考えています」と応答した。

3)山田 忠司(文教大学):“乐得(lèdé)”小考―北京語資料をもとに―
 《現代漢語詞典》第7版の親字“乐”(形容詞)の用例として“心里~得像开了花”が挙げられている(これはもちろん形容詞“乐”+様態補語標識“得”の形である)。また“乐”の見出し語として“乐得”が動詞(“得”は2声)として立項されている。その釈義は“某种情况或安排恰合自己心意,因而顺其自然”であり、用例として“主席让他等一会儿再发言,他也~先听听别人的意见”、“他们都出去旅游了,我一个人在家也~清静”が挙げられている。これは「喜んで~する」「~する方がましだ」「これ幸いと」と解釈できるものである。
 本発表では、上述の一般には動詞とされる“乐得(lèdé)”について卑見を述べた。この“乐得(lèdé)”は副詞というべきものであり、それは形容詞+様態補語標識である“乐得(lè·de)”を原型とし、そこから派生的に生まれたのではないかとする仮説を提示した。その根拠として副詞であることを明示したい思う書き手の意識の表れとして“乐得的”という副詞的接尾辞を伴った形が老舎作品などに存在することを示した。本発表で調査した資料は北京語資料のみであり、上述の仮説は正に仮説であるので、今後は他の資料にも調査の範囲を広げ、この仮説を実証したいと考えている。


2024年度中国近世語学会研究総会開催のお知らせ

2024年度の研究総会を、以下のとおり開催いたします。
日時:2024年6月8日(土)
場所:神戸市外国語大学
〒651-2187 神戸市西区学園東町9丁目1
https://www.kobe-cufs.ac.jp/access.html

内容:小特集、個人研究発表等
小特集の企画、個人研究発表者を募集いたします。4月26日(金)までに、中国近世語学会ウェブサイトの「お問い合わせ」から事務局にご連絡ください。


※ 2023年度会費をまだ納入していない会員は、どうぞお早めにお納めください。
郵便振替 口座番号:00980–6–119965 口座名称:中国近世語学会
振替払込書(青色)は郵便局に備え付けられているものを使用してください。