2013年度研究総会のご案内

2012年度中国近世語学会春季研究総会

ご挨拶

五月に入っても肌寒い日が続くかと思えば、突然真夏日がやってくるという不順な天候となっておりますが、如何お過ごしでしょうか。
本年度も下記の通り「中国近世語学会研究総会」を開催したく存じますので、会員諸氏の積極的な参加と活発な議論をお願いします。
PM2.5、トリインフルエンザ、尖閣列島問題などなど、中国をとりまく出来事は、暗いニュースばかりです。加えて中国侵略に頬被りを決め込むような安倍総理の発言、慰安婦肯定論を唱える橋下市長など、日本の「指導者」が総体として“背道而驰”な傾向にあります。こういう情況では、“大有黑云压城城欲摧之势”という表現を思い出さずにはおれません。
しかし、わたしたちは、こういう逆境でも、あるいは逆境だからこそ、自分たちのなすべきことをしっかりとなすべきだと考えます。研究総会を活発な議論の場とし、こうした逆境をはねかえしていこうではありませんか。

2013年5月15日会長 佐藤晴彦

日時:6月8日(土)11時より
場所: 関西大学千里山キャンパス 以文館 4階セミナースペース
関西大学千里山キャンパスまでのアクセス
◆大阪(梅田)から:
阪急電鉄「梅田」駅から、千里線「北千里」行で「関大前」駅下車(この間約20分)、徒歩約5〜10分。または京都「河原町」行(通勤特急を除く)で「淡路」駅下車、「北千里」行に乗り換えて「関大前」駅下車。

◆新幹線「新大阪」駅から:
地下鉄および阪急電鉄利用の場合、「新大阪」駅から地下鉄御堂筋線「なかもず」行で「西中島南方」駅下車、阪急電鉄に乗り換え「南方」駅から「淡路」駅を経て「関大前」駅下車(この間約30分)、徒歩5〜10分。
◆大阪(伊丹)空港から:
大阪モノレール「大阪空港」駅から「門真市」行で「山田」駅下車、阪急電鉄に乗り換え「関大前」駅下車(この間約30分)、徒歩5〜10分。

*以文館は、正門を入ってすぐの左手の坂を上って行き、途中左手の建物です。

プログラム

午前の部 11:00〜11:45
研究発表

1)発表者:内田慶市(関西大学)
題目:「『改良民国官話指南』の「釈義」からみた南北官話の実際」
要旨:「官話」研究の資料にはこれまでほとんど顧みられなかった資料もなお多く存在している。今回、主に取り上げる『改良官話指南』もその一つである。もちろん『官話指南』の一つの版本に過ぎないのだが、本文そのものでなく、附録として付けられた「釈義」の部分は極めて「おもろい」資料であり、官話研究、とりわけ南北の官話の差異を見るのに有用であると思われる。その釈義は、大きく、南北の語彙の違い、発音の問題、さらには風俗習慣の問題等々に分けることができるが、それらを具体的にながめていき、当時の官話の実際の状況を知る手がかりとしたい。

午後の部 13:00〜16:30
研究発表

2)発表者:
落合守和(首都大学東京)
題目:「『金[金+強]水』の言語について」
要旨:
清末民初の作家、冷佛の作品『金[金+強]水』とその言語特徴について、初歩調査の結果を報告する。
冷佛は、清末の北京で耳目を集めた事件に取材した中編『(實事小説)春阿氏』の編著者として知られる。清末民初、北京や天津の新聞では常連寄稿者の一人であったらしい。
清末北京語の言語資料としては、波多野太郎・太田辰夫・竹内誠など先学諸氏により紹介研究された蔡松齢の短篇『(社会小説)小額』に比べ触れられることが少ないが、『小額』が「発見」されるまでは、この時期の代表作として冷佛の『春阿氏』を取り上げるのが通例であった(例:張洵如編著1937、1949(2)『北平音系十三轍』八巻は、北平口語アル化語彙を捜集したものであるが、俗曲二百余種とともにその根拠として調査の対象とされた六種の書の一つは『春阿氏』であり、清末民初の時期としては唯一の挙例)。
冷佛の作品として北京の国家図書館、同古籍館及び首都図書館にはいくつかの所蔵登録があるが、発表者の知る限り、『金[金+強]水』の所蔵は知られていない。
『(哀情小説)金[金+強]水』上下二巻、不全、存:第二回至第七回、民國二年十一月廿四號至同年十二月廿七號、白話捷報社刊、冷佛著、排印本、半葉15行、1行31字、空格句読体 ウラに「白話捷報附張/随報附送不収分文/大中華民國二年十一月廿四號」等の語、オモテの右欄外に「閲報諸君將此頁按日存留以備装訂成册」の語がある。日刊白話報『白話捷報』の付録として連載され、読者がそれぞれ糸綴じの冊子とすることが謳われていたことが分かる。

3)発表者:竹越孝・岡本友紀(神戸市外国語大学)
題目:「『元朝秘史』傍訳と総訳の対応—1人称複数代名詞を手掛かりとして—」
要旨:
本発表では、『元朝秘史』の傍訳(逐語訳)と総訳(抄訳)の対応関係を分析することにより、『元朝秘史』の成立に関わる問題を考察する。栗林均(2003)「『元朝秘史』におけるモンゴル語と漢語の人称代名詞の対応」(『東北アジア研究』7:1-32)によると、『元朝秘史』におけるモンゴル語本文と中国語の傍訳にあっては、1人称単数biが“我”、2人称単数čiが“你”、1人称複数・除外形baが“俺”、2人称複数taが“您”のように、ほぼ一対一の対応関係が見られるのに対し、1人称複数・包括形bidaの系列のみでは(特に主格以外の格において)“咱”と“俺”が混在しているという。栗林氏はこれを、当時モンゴル語の側で既に崩壊しつつあった除外形と包括形の区別を、中国語の側では依然として反映させていたことによると解釈している。本発表では、こうした不均衡な対応関係が総訳でどのように処理されているかを検討することにより、総訳は本文・傍訳のどちらを参照して訳を作っているのか、そして総訳と傍訳ではどちらが先に成立したのか、といったいくつかの問題を論じたいと思う。
4)発表者:発表者:植田均(奈良産業大学)
題目:「出自が文言の語と“有聲無字”の語」
要旨:
中国近世語の語彙全体を大別すると、次の2種類になるのではないか。1つは、出自が文言によるもの、もう1つは、出自が所謂“有聲無字”の語である。それは、古代中国語の遺産を受けついでいる点(出自が文言によるもの)と民間庶民の口語(“有聲無字”の語)によるものだからである。
今回準備した語は、前者が“着[zhuó]、箸(筯)、食、湯”で、各々現代共通語“穿、筷、喫(吃)、開水”への「語彙の交替」の様子を中心に示したい。一方、後者は、“着[zháo]、學、桶、使、拾、落、坐、作(做)”で、近世中国語特有の釈義を持つと思われるこれらの語は現代共通語では(近世中国語特有の釈義は)一般に見られない。しかし、現代方言には残留しているので、その「地理的分布状況」を明らかにしたい。
検証方法は、これらの語が明清代北方の代表的資料(<<金瓶梅詞話>>、<<醒世姻縁傳>>、<<紅樓夢>>、<<兒女英雄傳>>を中心に、<<官話類編>>、<<語言自邇集>>等も参考)においてどのような様相を呈しているか調査・分析する。

総会

※同封のハガキにて、6月3日頃までに、出欠をお知らせください。
※発表者の方へ・・・レジュメは各自でご用意のほどよろしくお願いいたします。
※同封の振込用紙にて年会費(3000円)をお納めください。