2016年度研究集会のご案内

ご挨拶

 11月に入り木々もようやく色づいて参りました。今年は秋の訪れが遅く、天候不順でもありますが、会員の皆様には益々お元気で研究にいそしんでおられることと思います。
 さて恒例の秋季研究大会を下記の要領で開催致しますので、どうか奮ってご参加いただきますようお願い申し上げます。
 これまでに何度か企画して参りました「小特集」ですが、今回は「直訳」と「直訳体」をめぐってのワークショップを行います。4つの資料群を題材に、それぞれの発表者からご報告いただきます。今回の研究集会が、翻訳や文体に対する認識を深めるきっかけとなること、また活発な議論が展開されることを期待しております。

中国近世語学会 会長 内田慶市 2016年11月1日

日時・場所

日時:12月10日(土) 午前10時より
場所:愛知大学東京事務所
愛知大学東京事務所  銀座線虎ノ門駅直結〔11〕より徒歩2分
東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館37階

プログラム及び要旨

個人研究発表


1) 孫雲偉(大東文化大学大学院)(10:00~10:30)
《官話指南》的北京話語法研究

  呉啓太、鄭永邦合編的《官話指南》是第一本由日本人完成的北京話教科書,1881年刊行之後,又衍生出多種增訂版、方言版及外語版。目前為止《官話指南》的先行研究遍及版本、作者、語音、詞彙、語法等方面。在語法方面,太田辰夫、山田忠司、孫錫信、馬翼飛、呉麗君等老師作出了可貴的探索,成果顯著,但均非全書的系統性研究。
 本稿以初版《官話指南》為研究對象,全面系統地歸納、研究《官話指南》中的北京話語法。本稿首先對《官話指南》中出現的所有相關語法例句依類型收集用例,在此基礎上進行比較分析。為詳盡得出《官話指南》語法與北京話語法的相關數據,本稿進一步參考太田辰夫、周一民等先生以及《北京方言志》有關北京話語法特點的研究成果,進行類比分析,從中發現《官話指南》與北京話語法的關聯性以及《官話指南》所處時代語法表現的獨特性。《官話指南》作為十九世紀八十年代的作品,其語法的時代性研究,將試圖參考《兒女英雄傳》、《語言自邇集》等北京話口語文獻的語法研究成果,力求做出符合時代發展進程的深入探討和合理解析。


2) 斉燦(関西大学大学院) (10:30~11:00)
バロの漢語認識に関する一考察-『中国語官話文法』を中心に-

 マルティーニ(Martino Martini,1614-1661)の『中国語文法』(Grammatica Sinica,1653)が出版されたことが認められるまで、バロ(Francisco Varo,1627-1687)の『中国語官話文法』(Arte de la lengua Mandarina,1703)は一番最初に刊行された西洋漢語文法の著作と看做された。本書は、明末清初の頃の官話の音韻、語彙、文法における特質を詳細に分析している。全体的に言えば、『中国語官話文法』における漢語に対する考察は不十分であり、記述においても不適切なところが何か所もある。しかし、本書の西洋漢学史における位置付けは極めて重要であり、また西洋の初期漢語文法研究の代表作として、後世の漢語研究にも多大な影響を与えた。
 本発表では、『中国語官話文法』におけるバロの漢語に対する描写を基に、その観点を整理分析し、バロが漢語の文体、音韻、文法及び句法を如何に捉えているかを検討し、バロの「漢語認識」をまとめることを目指したい。


3) 王姝茵(熊本大学大学院) (11:00〜11:30)
『醒世姻縁伝』の擬親族呼称語の指示機能の変化について-“大嫂”と“奶奶”を例として—

 親族呼称語は、一般に呼称される相手との親族関係を示す以外に、相手の性別、年齢(中国語の“年齡”“輩分”)と年長者への尊敬などを表す機能もある。では、『醒世姻縁伝』(略称『醒』。以下同じ)で、それらの親族呼称語が非親族の人物への呼称語として使われる時、同じ機能を持つのだろうか?差異があるなら、それは何か?
 本研究では“大嫂”と“奶奶”を例としてこの問題を検討する。『醒』で「擬親族呼称語」として使われる親族呼称語は元の親族呼称語と比べると、「尊敬」と「年齢」の二つの意味が確かに変わっている。しかし、両者の変化は完全に同じではない。“大嫂”のように「年齢」の意味が意識的に使用されて、「尊敬」の意味を強調する言葉もあるが、 “奶奶”のように「年齢」の意味が弱くなって、「尊敬」の意味だけを持った社会的な敬語になる言葉もある。このことは、近世語では、「擬親族呼称語」の発展が均一ではないことを示している。本発表では、『醒』のすべての非親族に対する親族語を整理し、『醒』における「擬親族呼称語」を明らかにしたい。


4) 藤本健一(大東文化大学) (11:30~12:00)
『哲学字彙』の新語と中国近代新語への影響例として—

 本発表では『哲学字彙』の新語の特徴を考察するとともに、中国近代新語として借用された新語の性格を検討する。
『哲学字彙』は1881年(明治14年)に初版が刊行された後、2度の改訂を経るなど日本に広く流通した。本書は哲学以外に物理、政経、法律など多方面の専門用語を収録する英和対訳専門用語辞典であり、英和辞典の形成史に占める位置もさることながら、専門用語の定着においても重要な役割を果たした。また、その序に「該書不多載近世之字」とあるように明治以降の新語を多く使用すると同時に、独自の新造語も見られる。中国の近代新語にはこの『哲学字彙』に由来する新語は少なからず見られ、『哲学字彙』の影響力の深遠さを窺わせる。
 『哲学字彙』は訳語の選定に際して『佩文韻府』、『淵鑑類函』、『五車韻瑞』や儒書などを広く参考したとも指摘しており、参考の度合や近代中国における和製漢語の借用との関連性を考察していきたい。

2.小特集:「直訳」と「直訳体」をめぐるワークショップ(13:00~17:00)

 近年、中国語語彙語法史の分野でも文体差の問題が大きくクローズアップされるようになってきました。とりわけ「翻訳」が関わる資料群にあっては、「直訳」と「意訳」の問題は避けて通れませんが、この二つの概念だけで完結するほど単純な論点ばかりではないことも、すでに共通認識と言えるでしょう。一方で、「漢児言語」と「蒙文直訳体」の関係など、古くから関心を集めている問題もあり、その解決に向けてはさらに対象領域を拡大して視野を広げることも有効な手段となります。今回のワークショップでは、4人の発表者がそれぞれの資料群に見られる「直訳」ないしは「直訳体」的な現象について話題提供をし、その後フロアとのやりとりを通じて認識を深めたいと思います。自由討論の時間を多くとりますので、同様の問題意識を持つ方や関連領域に興味を持つ方の参加を歓迎します。

発表者:
1.蒙文資料…川下崇(首都大学東京大学院)
2.満文資料…竹越孝(神戸市外国語大学)
3.朝鮮資料…伊藤英人(国際日本文化研究センター)
4.欧文資料…内田慶市(関西大学)

司会…奥村佳代子(関西大学)


*発表者の方へ
レジュメは各自でご用意お願いいたします。

*終了後に懇親会を予定しております。

*今年度会費(院生・学部生以外の方は5000円、院生・学部生の方は3000円)をまだ納入されておられない方は、郵便振替にてお納めください。