2023 年度研究集会のご案内

ご挨拶

 猛暑がうそのような陽気となりましたが、会員各位には如何お過ごしでしょうか。今年度の研究集会が対面開催できることは喜ばしいことかと思います。発表件数がやや寂しいですが、オンライン開催でもありますので、是非活発な議論を御願いいたします。
 さて、他に申し上げることもないので、埋め草として『中国語文』に初めて掲載された日本人の論考をめぐって若干ご紹介したいと思います。それは『中国語文』1953年10月号に掲載された太田辰夫先生の「近代漢語”無心“的動詞的形成過程”(陳文彬節譯)です。その原文は『中国語雑誌』(5,6号)1950年に掲載された「近代語における非恣意動詞の形成について」です。訳者の陳文彬氏は台湾出身で日本とも緣の深い言語学者。お嬢さんは北京放送アナウンサーで日本でも活躍された陳真氏。陳文彬氏がどういう経緯でこの論文を翻訳されたかは不明ですが、香坂・太田著『現代中日辞典 増訂版』の「はしがき」にも「しばしば北京の陳文彬先生を煩わし、~」とあることから交流があったことが窺われます。

中国近世語学会会長 山田 忠司
2023年10月24日

日時・場所

日時:2023 年 11 月 25 日(土)*13:00開始(開催日にご注意ください。今回は11月に開催いたします。)
場所:中央大学後楽園キャンパス6号館4階の6410教室
〒112-8551 東京都文京区春日 1-13-27
https://www.chuo-u.ac.jp/access/kourakuen/+Zoomミーティング
(ZoomのミーティングIDとパスコードは後日、参加希望者に告知いたします、問い合わせフォームからご連絡ください)

プログラム及び要旨

研究発表(13:00 – 16:00)

13:00 – 14:00
鄒 王番(関西大学)
「《教务杂志》汉语学习专门文章中的汉语学习经验」

14:00 – 15:00
陳 暁(神戸大学)
「清代後期における北京内城と外城の北京語について」

15:00 – 16:00
山田 忠司(文教大学)
「“乐得”小考」

閉会


発表要旨

1)鄒 王番:《教务杂志》汉语学习专门文章中的汉语学习经验
  在《教务杂志》(The Chinese Recorder)办刊历史中,曾刊登过若干篇专门描写汉语学习的文章,这些文章篇幅较长,所涉的汉语学习经验丰富。本文选取尹世嘉(O. F. Wisner, ?-?)、富善(Chauncey Goodrich,1836-1925)以及潘慎文(Alvin Pierson Parker,1850-1924)的文章,借以一窥究竟。这三人都有在教学机构中任职的经历,尹氏和潘氏还担任过学校的管理者。
  一言以蔽之,他们总结的经验大多是有借鉴意义的。同时,亦有部分值得商榷,甚至是片面乃至错误的。从学习内容来看,来华传教士在学习汉语时应当重视口语学习,平衡好与书面语学习的时间。从语言要素的角度看,语音方面,首先要重视发音,具体而言包括送气音与不送气音、声调、轻重音等。词汇方面,强调积累的重要性,此外,要特别注意礼貌用语的学习。汉字方面,保证汉字书写的练习。从学习方法来看,第一,强调记忆的方法。第二,适当以母语书籍辅助学习,主要是了解目的语国家、语言的相关情况,激发学习兴趣。第三,跟随汉语教师学习。第四,合作学习。从学习态度来看,要保持端正的学习态度。关于拉丁化的使用,传教士们莫衷一是,既有支持学习拉丁化,甚至鼓励学习者自己设计拉丁化系统的,亦有保持中立的,还有鲜明地反对拉丁化系统,认为应直接学习汉字的。这些看似相互矛盾的观点折射了来华传教士在汉语学习中的不同思考。

2)陳 暁:清代後期における北京内城と外城の北京語について
 本発表では、清代後期の北京語を記録・反映する文献を対象として、北京内城と外城の北京語について論じる。
 19世紀以降の西洋人が編んだ中国語教科書、明治時代の中国語教科書及び北京語の辞書や各種の先行研究などによると、清代後期における北京内城と外城の北京語には違いが存在する。本発表では、声調、子音・母音、語彙の各面から、その様相を論じてみたい。
1.声調。H. GilesのA Chinese English Dictionary(1892)には、北京内城・外城、そして旗人の言葉の違いについての記述がある。これに基づいて、他の西洋人が編んだ中国語教科書、明治時代の中国語教科書などを調査し、いくつかの特徴的な声調を取り上げて述べる。
2.子音・母音。先に述べたH. Gilesの著作以外に、他の文献(明治時代の中国語教科書、地方志、北京の社会風俗を記録した書物、北京語辞書など)においても、北京内城・外城では同じ文字に対して、子音・母音の異読現象があることを記録している。それらの異読現象やその特徴を取り上げて述べる。
3.語彙。発音と同様に、北京内城・外城の語彙もそれぞれ異なるものがある。それらの語彙についてまとめて論じる。

3)山田 忠司:“乐得”小考
 《現代漢語詞典》第7版の親字“乐”(形容詞)の用例として“心里~得像开了花”が挙げられている(これはもちろん形容詞“乐”+様態補語標識“得”の形である)。また“乐”の見出し語として“乐得“が動詞(“得”は2声)として立項されている。その釈義は“某种情况或安排恰合自己心意,因而顺其自然”であり、用例として“主席让他等一会儿再发言,他也~先听听别人的意见”、“他们都出去旅游了,我一个人在家也~清静”が挙げられている。これは「喜んで~する」「~する方がましだ」「これ幸いと」と解釈できるものである。この二つの“乐得”について、北京語資料を材料に副詞接尾辞“地(的)”と絡めて若干の私見を述べてみたい。