ご挨拶
猛暑が続いておりますが、会員各位には如何お過ごしでしょうか。去る6月8日に開催されました本年度研究総会は30名以上のご参加があり、非常に盛会でした。下記にあるとおり、12月15日には下記要領にて研究集会を開催いたします。こちらも奮ってご参加をお願いします。
さて本学会元会長、神戸市外国語大学名誉教授 佐藤晴彦先生におかれましては本年5月22日急逝されました。ここに謹んで哀悼の誠を捧げます。佐藤先生は皆様ご承知の通り、正に日本の中国語学界を長年に渡り、牽引してこられました。その学問上のご功績については皆様よくご承知のことと思いますので、ここでは、不肖の弟子として、個人的な学恩の一端を述べさせていただきます。
私は神戸市外大学部卒業後一般企業に就職し、15年以上を経て、勉学の道に戻ってきた者です。それで佐藤先生に学生としてご指導いただいたのは、神戸市外大博士後期課程に佐藤先生の最初の学生として入学した時からでした。40歳になろうとしておりました。ろくに中国語も読めない私を正に手取り足取りご指導いただきました。その時初めて悉皆調査という言葉も知りました。先生に教えていただいた一番大きなことは研究に向き合う姿勢だと思います。佐藤先生はとにかく真摯にひたむきに研究と向き合っておられました。私などはとても真似できないと足が竦むばかりでした。昨年11月5日日本中国語学会全国大会会場の目白大学でご一緒し、東京駅までお送りしたのが最後になってしまいました。まだたくさん教えていただきたいことがあったのに本当に痛恨の極みです。今はただご冥福をお祈りするのみです。
中国近世語学会会長 山田忠司
2024年7月16日
2024年度中国近世語学会研究総会
日時:6月8日(日)10:00〜17:00
場所:神戸市外国語大学 三木記念会館
研究発表報告
1)从明初吴语区诗人诗作出韵来看明代初期吴方言的一些韵母特征
関西大学大学院 余仁偉
本发表主要围绕钱谦益《列朝诗集》中所录吴语区诗人所作诗作的出韵情况进行了探讨,通过对比明代后期《声韵会通》、《并音连声字学集要》、《元声韵学大成》这三类以吴方言为语音基础的音韵资料,得出了几项明代初期吴方言的韵母特征。
本发表指出了一些在明代初期吴方言中就已经产生的变化。譬如阳声闭口韵尾-m的消失,其年代应远早于明代后期,在明初吴语区诗人诗作中便可见此类用韵,所以吴语中-m韵尾的消失应早在明代初期就已经开始。其他诸如入声韵尾-p的特征弱化,-t、-k韵尾发生混同这类反映入声韵尾发音部位产生混同的情况也可从明代初期的诗作用韵中窥见端倪。此外,明初吴语区诗人诗作的用韵也有与其他地区相类似的情况存在,如梗曾二摄的通韵,蟹摄合口一等灰韵类同止摄通韵,蟹摄佳韵类部分字与假摄发生混同。这类通韵在中原、江淮地区的诗人诗作中也可见到,本发表也阐述了这几类不同地区诗人所用的相同通韵或许反映了明代初期的官话特征这一观点。
在问答环节蒙参会老师的指点,应当注意吴语中的内部差异,比如北部吴语与南部吴语的区别;另外也当着眼于如《山歌》等更能反映吴语口语的资料。这些意见对之后的研究极有帮助,在之后的研究中也会讨论这些问题。
2)使役動詞の使用状況からみる北京語資料の性質の差異について
京都産業大学 今村圭
本発表では、清末以降の北京語で書かれたとされる作品を対象資料とし、使役動詞の使用状況から、それぞれの作品における北京語の反映度を考察した。
発表では、まず《小额》、老舎作品、王朔作品を対象に調査を行った結果を報告した。《小额》・王朔作品と老舎作品の間には使役動詞の使用状況に明らかな違いが見られ、そのような違いは《小额》・王朔作品が北京語を反映する程度が老舎作品よりも高かったために、引き起こされたものであると結論付けた。
続いて、上記の調査で得られた結果をもとに、《早期北京话珍本典籍校释与研究》(北京大学出版社)の中の《新鲜滋味》、《评讲聊斋》、《花鞋成老》を対象資料とし、使役動詞の使用状況から、北京語の反映度が高い資料を捜索した結果を報告した。
本発表では使役動詞の使用状況を中心に考察を行ったが、今後はそれ以外の観点からも考察を行いたいと考えている。
3)『満文金瓶梅』の内部差異―編纂過程解明の試み
東京都立大学 荒木典子
『満文金瓶梅』(康熙47年序刊本)の編纂過程を、人物名の満文訳と部分的に付された漢文添え書きを手掛かりに明らかにする。人物名の中でも、親族名称を含む呼び名・通称の場合、満文表記にバリエーションが生じることがある。例えば、「吳大舅」にはu-da-gioとu amba nakcuという表記がある。これは、翻訳方針の違いを反映するものである。それらの分布を見ると、同一回内で混在しているケースも少なくない。つまり、異なる方針を持った複数の翻訳者たちが、頻繁に交替しながら本書を訳していたと考えられる。こうして訳稿が完成したが、このままでは読者の混乱を招きかねない。しかし漢文添え書きでマークしてあれば、表記が異なっても同一人物であることがわかりやすくなる。添え書きの中には、必ずしも底本をよく見て書いたとは思えない誤字が見られることから、翻訳作業中に付されたものではないと考えられる。人物名に限らず、本書における漢文添え書きを見渡すと、やはり方針の違いが垣間見え、添え書きに携わった人物も複数いたと思われる。
これに対し、翻訳者が頻繁に交替する合理的な理由がない、ほかの漢文文芸作品の満文訳、例えば順治本『満文三国志』でも、同一の語句に対する複数の訳語が至近距離で混在することがある、というご指摘をいただいた。今後は『金瓶梅』以外の満文訳本にも目を向けて調査を継続したい。
4)『中原音韻』音系uau韻母存在説について
龍谷大学名誉教授 岩田憲幸
元・周徳清『中原音韻』の音系にuau韻母注1)が存在するという指摘はつとになされている。注2) だがこの見解はいまだひろくうけいれられるにはいたっていない。注3) 近代漢語の音系にuau韻母はあったのかいなか。これは漢語音韻史研究においてさけてとおれない問題である。
『中原音韻』系の韻書に明・王文璧『中州音韻』がある。本発表において同書音系にuau韻母が存在することを報告した。このことは『中原音韻』にuau韻母が存在したことの有力な傍証となる。その他の音韻史料にもuau韻母が存在する徴証がみられることを指摘した。近年、現代河北方言の一部に[uɑu]韻がのこされていることもよりくわしく報告されている。
近代漢語の音系にuau韻母が存在するという見解はみとめられなければならない。
注1)uauは厳密な音価をあらわすものではない。『中原音韻』第十一蕭豪韻に合口韻母があるとした場合の一標音形式としてしめしたものである。
注2)趙蔭棠『中原音韻研究』(1936)のほか、董同龢、藤堂明保、許世瑛、F.S.Hsueh、佐々木猛、邵栄芬、佐藤昭諸氏らの著述参照。
注3)『中原音韻』に関する代表的な専門書、たとえば李新魁、寧継福、楊耐思、張玉来・耿軍、李恵綿諸氏らの著書ではuau韻母の存在をみとめていない。
5)招待講演
《韵镜》“内外转”构式“不对称性”与“官话音”变式图衍生
李無未(厦門大学中文系・東京大学客員研究員)
日本学者研究中国《韵镜》已经800多年。清末,《韵镜》从日本回传到中国,引起了中国学者极大地兴趣,由此,中日互动,对《韵镜》展开了极其深入的研究。其中,“内外转”构式认知,成为争议比较大的焦点。本文从《韵镜》内外转构式认知中的“对称性”与“不对称性”角度切入,以“不对称”构式特征为认知起点展开论述。比如“二等字五音具足与否”理论矛盾之处,罗常培“内外转”拟音“构式”以主要元音翕侈而“二分”做法的局限性。三泽谆治郎认为,研究《韵镜》“内外转”“构式”应该从历史进程去理解。我们受其启发,提出《韵镜》内外转构式“不对称”特征及其衍生变式研究观点。大田嘉方《韵镜遮中抄》与汤浅重庆《韵镜问答钞》同属一系韵图。《韵镜遮中抄谚解》“构式”图“内转第二十八合”之“内转”“外转”标记,仅仅是一种符号而已,并没有实际语音结构分析的意义。《韵镜遮中抄谚解》每一转图之内的字音安排在悄然发生变化,这与其罗常培所强调的《韵镜》“内外转”之“舌缩为内、舌舒为外”内涵肯定是没有必然的联系,可以说,这与《韵镜》“内外转”对称性“构式”已经基本无关了,走向了另一种“不对称”“变革”构式“变形”的道路。日本《韵镜藤氏传》原有的“内外转”只是一种摆设,而新的等呼认知,成为制约“内外转”调整的至重要素。日本《华音韵镜》强调“中华变音”“内外转之间转化”,强化汉语官话语音“内外转互变”意识,这是值得进一步研究的现象。
総会報告
審議事項
1.2023年度収支報告
2.佐藤晴彦元会長追悼集会について
報告事項
1.『中国語研究』66号の編集状況について
2.『中国語研究』投稿規定と執筆要領の検討について
その他
1.佐藤晴彦元会長の『近世漢語の新研究』の刊行について
2.役員選挙実施について
2024年度中国近世語学会研究集会開催のお知らせ
2024年度の研究集会を、以下のとおり開催いたします。
日時:2024年12月15日(日)*開催日にご注意ください。
場所:神戸市外国語大学 三木記念会館
〒651-2187 神戸市西区学園東町9丁目1
https://www.kobe-cufs.ac.jp/access.html
*神戸市営地下鉄「学園都市」駅下車徒歩すぐ
(神戸市営地下鉄西神・山手線「新神戸」から「学園都市」までは約27分、「三宮」から「学園都市」までは約24分)
内容:
佐藤晴彦元会長の追悼シンポジウムとなります。
個人研究発表をご希望の方は、10 月25 日(金)までに、中国近世語学会ウェブサイトの「お問い合わせ」から事務局にご連絡ください。
*研究会終了後に役員選挙を実施します。
年会費納入のお願い
今年度(2024年度)会費(一般5,000円、院生・学部生3,000円)を、下記のいずれかの方法でお納めください。昨年度分までの未納のある方は、年度を明記のうえ、併せてお納めください。
郵便振替の場合
口座番号:00980–6–119965 口座名称:中国近世語学会
*振替払込書(青色)は郵便局に備え付けられているものを使用してください。
ゆうちょ銀行にお振り込みの場合
099(ゼロキュウキュウ)支店
当座預金0119965 チュウゴクキンセイゴガッカイ